NPO法人 フードバンクとちぎ

理事長 古川明美さん、理事 古川勉さん、監事 田中秀和さん、酒井操さん

 

企業から施設へと食品をつなぐ「フードバンクとちぎ」

「フードバンクとちぎ」は、食品関連企業などから寄贈された安全・安心な食品を、必要とする施設などに無償で提供している小山市内のNPO団体です。

「フードバンクとちぎ」では、主に企業からの寄贈食品を管理し、特定の施設へ配送するコーディネート活動を担っています。毎週土曜日に受け取った食品の品質を確認し、施設ごとに何をどのくらい配送するかを調整したのち、児童養護施設をはじめとした約15の団体に届けています。対応が難しい平日や、個人の方への食品の配布は、小山市社会福祉協議会と連携して行っています。

食品の内容としては、パン・米製品等の主食から果物、菓子や飲料まで多岐にわたっています。時には期限が近くなった災害時用非常食が企業から一度に大量に提供されることもあれば、利用者のニーズを受けて少量多品種の食品を配達している施設もあります。こういった様々なケースに対応しながら「フードバンクとちぎ」は取り扱う食品量のバランスを保っています。その量は2020年度は約8.6トンにもなります。そのため数的な管理も重要な作業の一つで、バーコードを用いて商品データをPCに取り込み記録するなど、活動を継続するために効率化も進めています。

コツコツ歩んだ12年間

「フードバンクとちぎ」の活動は2010年から始まりました。日本初のフードバンクである東京の「セカンドハーベスト・ジャパン」の存在を知り、研修を受けたことが活動を始めたきっかけです。その当時はフードバンク団体が全国で急速に立ち上がり始めた頃で、日本社会での「フードバンク」の定義そのものもはっきりと確立されていませんでした。そのため栃木県ではもちろん、全国のフードバンク団体がそれぞれやり方を模索しながらの活動だったとメンバーのお一人は話しています。

まず理事のメンバーで研修会を行い、当初はセカンドハーベスト・ジャパンから食品の提供を受けていました。次第に地域の企業や団体から食品をもらえるようになり、2011年3月の東日本大震災後は定期的な活動へと発展していきました。

「フードバンクとちぎ」は母体となる団体があったわけではなく、フードバンクの活動そのものを目的とし、立ち上がったNPO法人です。主に活動しているのはボランティア4名ほどで、人数と金銭的な制限がありながらも、これまで一連の活動を続けてこられたのは提供される食品があったから、そして配布先とお互いに協力し合う関係があるからといいます。例えば、食品の保管のために普段使用している冷蔵庫は、毎週配布をしている施設の一つから寄付されたものです。

活動メンバーのお一人は、「やり方すらわからなかったところから私たちは10年以上続けてこられた。大規模な団体でなくともフードバンクはできる。だからどの地域にも一つそういうのがあれば」と話しています。

 

 

長く続けられるボランティア活動を

コロナ禍により貧困問題がさらに深刻化している現在、「フードバンクとちぎ」ではフードバンクを通じて食べ物の支援が必要な人はもちろん、全ての人が必要な時に必要な食べ物が手に入る社会の実現を目指しています。そのため、各メンバーが仕事と掛け持ちで活動に制限がある中でも、現状を維持していくことが今後も大切だと語っています。それは、フードバンクは専門の団体だけが食品を集めて配達する活動ではなく、少人数でも地域の草の根的な運動であっても継続して続けることで成果をあげられたり、様々なネットワークを作ることができることを実際に示すことで、フードバンク活動が多様化し活性化を促せるのではないかと考えているからです。

また、日本のボランティアは依然としてどこか自発的ではない印象があることも最後に挙げ、フードバンク活動は食品リサイクルの観点から、食品を必要とする人にのみ向けた取り組みではなく、全ての人に関係する課題に有効な取り組みであることをもっと知っていただきたいと考えています。多くの人が自らの課題としてそれぞれのできるやり方でフードバンクに関わっていただき、企業などにもその輪が広がることによって、日本でのボランティア文化の広がりを願っていました。

今日も「フードバンクとちぎ」は「日本一小さなフードバンク」として、食品ロスの軽減と貧困問題の改善に向け、ささやかな活動を続けています。

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取材 小松原さん
規格外食品がある企業と、それを必要としている団体だけではなく、両者をつなぐフードバンクの活動があってこそ、効果的・継続的に食品を活かせることを学びました。また、改めて自分のボランティアに対する向き合い方を考えるきっかけになりました。