トチギ環境未来基地 こどもの里山プロジェクト

NPO法人 トチギ環境未来基地 代表理事 塚本 竜也さん

こどもの里山プロジェクト

トチギ環境未来基地はもともと、ボランティアの皆さんと共に、栃木県内の手入れができず荒れてしまった里山や里山の整備を進めている団体です。その整備した里山を活用して、5 年前から「こどもの里山プロジェクト」を始めました。子どもたちが里山で安全に楽しく遊べる里山を県内各地に増やすことを目指したプロジェクトです。子どもたちと里山で走り回ったり、虫を捕まえたり、探検をしたり、といったプログラムも定期的に行っています。このプログラムの中に困窮世帯の子どもたちを支援するという柱も取り入れ、ご寄付などをいただきながら、里山で遊ぶプログラムに参加したいと思ったら誰でも参加できる仕組を整えています。

今年度は、コロナウイルスの感染により、子どもたちが置かれている状況がよりしんどいものになりました。里山で子どもたちに向けてできることはないか、ということで、キッズハウスいろどりさんと一緒に、休校期間中、外に出れなくてストレスが溜まってしまう子どもたちや家族に対して、森で子どもたちを一日お預かりする「森でリフレッシュプログラム」というとものを行いました。実際やってみると参加希望も多く、親御さんからも、「休校中、私は仕事で外に出なければならないので、この子を預かってもらえたら、と思っていました。」 「本当にこどものストレスが溜まっていて、すこしリフレッシュさせてあげないと、と思っていたのでありがたかった。」といった声もいただきました。

全ての子どもたちに里山での自然体験の機会を届けたい

里山にやってきた子どもたちは、自由に楽しく過ごしています。小さいうちから自然に触れるそうしたことを通じて、子どもたちの健やかな成長を支えていきたい、というのが子どもの里山プロジェクトの願いです。

プロジェクトを始めてから県内でも「こども食堂」が始まるなど、こどもの貧困に対する様々な取り組みが行われるようになり、私たちもこども食堂や困窮世帯の子どもたちとの接点ができ始めました。これまで子どもたちのプログラムは参加費をいただいて提供することも多かったのですが、経済的に参加費を支払うことが難しく、参加ができない子どもたちがいるということもわかってきました。

どんな子どもたちであっても、参加してみたいと思ったら参加できる環境を整えることも大事だと思うようになりました。そして、ご寄付をいただきながらプログラムを実施する現在の形になっていきました。

 

これから

小さいときに里山で遊んだり過ごしたりすることは、子どもたちの成長にとってすごく大切なことだと思います。その子なりの感受性
や、好奇心を育み、今後の人生を支えていく土台を築いていく時間にもなります。もちろん身体的にも体をいっぱい使って遊ぶという
ことも健やかな成長にとって大切なことです。焚火をしたり、モノを作ったり切ったりすることで身につていくライフスキルも、いろ
いろ得ていってほしいと思います。禁止事項ばっかりの公園ではできないことも、ここではできる。そんな子どものチャレンジ精神や
好奇心を満たすことができる自由さも担保していきたいです。そのためにもこどもの里山プロジェクトは、今後も続けていきたいと考
えています。

また、子供の貧困の調査が進む中で、子どもたちの中では、経済的な格差だけでなく、体験の格差というものも生まれてきているということが見えてきました。体験の格差というのは、例えば一般的な生育過程で経験する、家族での余暇活動だとか、キャンプだとか、
そういったことを実施できない家庭で育つ子どもたちの中に、やったことがあるないという体験の格差が生まれるというものです。遊
ぶこと、自然体験をすることは贅沢なことではありません。必要なことです。

こういった体験の格差を埋めるということに対しては、子どもの貧困に直接関わる団体だけでなく、他の様々な分野の団体ができることも、いっぱいあると思います。お家の中だけで、子供たちを育て上げるのではなく、お家と地域で、みんなで、子どもたちを育てていくということができていけば、どんな家庭環境であっても、いろんな大人に囲まれながら必要な体験をし、育っていくことができると思います。その意味でも子ども支援団体に、他の分野の団体が積極的に関わっていく、ということもこれからとても大事なことだと思います。

一方で里山にとっても子どもたちが来るということは大きな意味があります。里山を整備する人が減ったり、里山自体も利用価値を失ってきたりしたことで、荒廃する里山が増えてきました。こどもたちが里山にきて、遊んでくれることは、里山に新たな役割を与え、健里山を整備し続けようという動機も生みます。だから、里山にとっても、こどもたちが里山に来てくれるということは、とてもプラスなことです。お互い様の関係です。

私たちは、里山や森林など、みどりの領域で、子どもたちのためにできることを続けていきたいと考えています。全ての子どもたちに里山での自然体験の機会を届けたい里山にやってきた子どもたちは、自由に楽しく過ごしています。小さいうちから自然に触れるそうしたことを通じて、子どもたちの健やかな成長を支えていきたい、というのが子どもの里山プロジェクトの願いです。

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県東地域コーディネーター 萩原さん
子どもたちにできることは、いろいろあるなと思いました。里山という切り口だけでも子どもたちと関わり、一緒に遊んだり過ごしたりできる関係を築いていけるということは、様々な可能性を感じ、すごく魅力的だと思いました。