認定NPO法人蔵の街たんぽぽの会
代表理事 石河不砂さん
子育て支援と環境整備で人と人が支えあう地域作り
認定NPO法人蔵の街たんぽぽの会は、障がい児・者、高齢者、児童などさまざまな人がお互いのハンディにかかわりなく交流できる場をつくってきました。参加者が交流を楽しみ、自立・自己実現を目指すとともに、地域の子育て支援と地域の環境整備を通して、人と人とが支えあう地域社会づくりに寄与することを目的に20年以上活動を続けています。
1982年に前身となる団体「栃木身体障がい児・者親の会」から活動が始まり、現在に至るまで様々な活動をしてきました。それらの活動と想いについてお話したいと思います。
親と子のサロン「とちぎおもちゃ図書館」
認定NPO法人蔵の街たんぽぽの会は自主事業として、おもちゃで自由に遊ぶことのできる「とちぎおもちゃ図書館」を運営しています。1989年から運営を始め、1992年から栃木保健福祉センターに常設されるようになりました。さらに、2020年4月には「子育て支援センター」の運営に携わり、子育てに関する相談業務を併設して行っています。
子ども図書館ではそこにあるおもちゃで自由に遊ぶことが出来ます
「とちぎおもちゃ図書館」は誰でもフラッと好きなときに出入りすることができ、500種類以上あるおもちゃで遊ぶことができます。また、子ども一人につきおもちゃを1点、無料で1週間貸し出すサービスもしています。
おもちゃは子どもの興味関心を促し、遊びを始めるきっかけとなり、遊びは人の成長に大切な力を発揮します。色々なおもちゃに触れる機会を作ることで子どもの豊かな感性を育み、親子の触れ合いに役立ててもらうことを大切にして運営しています。
「とちぎおもちゃ図書館」の運営には、保育士を含めた職員とボランティアの方々がスタッフとして関わっています。利用された人たちの中から気になるケースがあれば、家庭相談員や心理士、助産師と連携し、適切な機関に連絡、相談をしています。ヤングケアラーやネグレクトで虐待につながる可能性のある子どもが、自分の家のように過ごせる居場所「子どもの部屋たんぽぽ」を利用することになったケースもあります。
障がい児として生まれた子どもの親たちが作り上げた空間
障がいとは身近なもので、ちょっとした出産トラブルで赤ちゃんが障がいを持ってしまうこともあります。今、自分が健康だったとしても何かしらの事故でいつ体が不自由になるかもしれません。
「みんな障がいと隣り合わせということを分かってほしい」という想いで1982年に障がい児をもつ親の当事者団体「栃木身体障がい児・者親の会」を私を含む仲間4人と立ち上げました。
その当時、障がい児は地域の中で生きていきたくても保育園や学校に入れず、行くところがあまりありませんでした。そこで親同士が集まり、障がい児とその親の居場所づくりを行うことにしました。
居場所づくりを進める中で、障がい児もそうじゃない子も遊ぶときは変わらないことに気づき、誰でも来れるおもちゃ図書館を目指すことに。
「栃木身体障がい児・者親の会」とボランティアのメンバーで「とちぎおもちゃ図書館」を運営していましたが、月日が経つと、参加できる障がい児の親が減ってきました。そこで「栃木身体障がい児・者親の会」は親睦団体として残しつつ、地域の人と協力しながらおもちゃ図書館を運営する「蔵の街たんぽぽの会」を2002年に設立する運びとなりました。
私自身も障がいのある子どもがいます。その経験からも強く感じているのですが、生活の中で子どもと何かをしようとするときに先にその子どもが出来ることを決めつけてしまうと出来ることが狭まってしまいます。でも一緒にいて見守ることからスタートすると、私が考えている以上に出来ることが見えてきます。体験したり遊んだりすることでその子のことを理解でき、より多くの出来ることを発見できます。子どもの成長する環境をどのように整備するかが大事だと感じています。
本当に支援が必要な子どもたちに届く社会に
支援が必要な子どもたちと関わるようになり、今、社会が見なければいけない子どもたちが沢山いると感じています。特に貧困という課題を抱える家庭があるなかで、子ども食堂が増えてきているのは、社会としてとても大切な動きだと思っています。その一方で、まだまだ子ども食堂にも行く事ができない子どもたちがいることも実感しています。
貧困の子どもたちが子ども食堂などの環境に行けるようになるためには、要支援の家庭の事情を社会全体が理解しようという意識になる必要があり、誰がどこに行っても入りやすい環境を考えていく必要があると思っています。
今後は多くの人たちが関わり、活動しやすい環境を整えるためにも、団体の立ち上げ方、関わった人が活きる仕組み作りなど、蔵の街たんぽぽの会の知識や経験を伝えていく活動をしていきたいと考えています。
取材 宮岸誠
おもちゃ図書館自体が夢の国のような場所なので誰でも入りやすく、自然と遊べる雰囲気が出ていてこの環境づくりは素敵だと感じました。歴史がある団体で親も子どももおもちゃ図書館も共に成長してきたような印象で、活動が地域のつながりになり、輪を広げている様子をヒシヒシと感じました。